パリから240km、ロワール渓谷近くのフランス中部アンボワーズという街にある、アンボワーズ城は川のほとりに建つお城。ゴシック様式とフランスルネサンス様式を組み合わせた象徴的な建築です。
このアンボワーズ城はフランスの歴史の中で大きな役割を担っていました。アンボワーズはヴァロワ朝とブルボン朝の歴代の国王の居住地とされ、政治や経済、芸術の中心地となっていました。かの有名なフランソワ1世もこの地で過ごし、ルネサンス芸術への趣向からイタリアの作品を買いこの城に飾ったと言われています。
シャルル7世からフランソワ1世までの歴代の王たちがこのアンボワーズ城で暮らしていました。家具のうち一部はフランス革命時に壊されてしまいましたが、現在でもゴシック様式からルネサンス様式までの貴重な作品が多く飾られています。
城の上からはロワールの川が流れる美しいアンボワーズの街並みを見下ろすことができます。歴代の王たちもこの長閑な風景を眺めながら過ごしていたのでしょうか。
1493年に建てられた、華やかなゴシック建築のサン・ユベール教会堂。イタリア・ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチは1519年に亡くなりました。現在では城を訪れるとダ・ヴィンチの墓と、彼にまつわるエキジビションを見ながら、偉大な芸術家の足跡をたどることができる場所となっています。
サン・ユベール教会堂のステンドグラスはルイ9世の生涯を描いたもの。色とりどりの美しい光をもってフランスの君主制度の歴史に触れることができます。
川の畔に建つアンボワーズ城の庭園は、美しいディテールが至る所に散りばめられています。ローズマリー、ジャスミン、月桂樹、杉が植えられており、なんとも優雅な雰囲気。この庭園越しに見る城の風景は格別です。特に夕暮れ時には優しい光が観ている人を穏やかな気持にしてくれます。
アンボワーズ城から400mほど歩いたところにあるのが、クロ・リュセ城。こちらは12世紀に建てられた城を1471年に立て直したもの。八角形の塔を囲むように城が建っています。白の外観はピンク色のレンガとトラバーチンと呼ばれる白い石灰岩で彩られ、15世紀の典型的な建築様式を反映したエレガントなつくり。城の周りには青々とした森が広がっています。
1516年、フランソワ1世はレオナルド・ダ・ヴィンチをフランスに招き、この城を用意しました。そしてダ・ヴィンチは弟子たちを連れ、この城で最期の3年間を過ごすことになります。ダ・ヴィンチは画家でありながらも彫刻家、エンジニア、建築家としての顔も併せ持ち、この地で数々の作品を作り上げました。有名な「洗礼者ヨハネ」もここで完成された作品のうちの一つです。
ダ・ヴィンチの寝室やフランソワ1世の姉のマルグリット・ド・ナヴァルの寝室、弟子たちが描いた礼拝堂のフレスコ画、レオナルド・ダ・ヴィンチがアンボワーズに滞在する芸術家たちを出迎えた部屋などを見学できます。博物館風のホールでは、バーチャルテクノロジーを使った展示で彼の歩んだ人生を学ぶことができます。「モナ・リザ」、「聖アンナと聖母子」、「洗礼者ヨハネ」の3つの代表作品についても知ることができます。
城内を見学した後は庭園に出てみましょう。庭園内にある植物たちは、ダ・ヴィンチの作品の中に描かれているものが多くあります。庭の構成はダ・ヴィンチの芸術的、哲学的な考えのインスピレーションのもとになっていたと言われています。自然の美しさもさることながら、ダヴィンチによって発明された模型の数々も見どころです。庭園を巡りながら、世紀の天才の哲学に触れてみましょう。
見学後に時間があるのであれば、アンボワーズの街で少し休憩して見るのはいかが?アンボワーズの小さな町は、都会とは違ったゆったりとした雰囲気が特徴的。城の近くには美味しいレストランやカフェが点在しています。この通りを偉大なレオナルド・ダ・ヴィンチが歩いたのかな〜なんて思いながら街を散策するのも楽しくておすすめです。
撮影 Yi ZHAO
著者 Yuka
アンボワーズ城 CHATEAU ROYAL D'AMBOISE
住所 : Montée de l'Emir Abd el Kader, 37400 Amboise
アクセス : アンボワーズ駅(Gare d’Amboise)から2 km
クロ・リュセ城 CHATEAU CLOS LUCE
住所 : 2 Rue du Clos Lucé, 37400 Amboise
アクセス : アンボワーズ城から400m