アルル国際写真祭は約3ヶ月間に渡って開催されるヨーロッパでも最大級の写真フェスティバル。アルルの街全体が写真ギャラリーと化し大小様々な展覧会が開かれる他、期間中第1週目には写真家による講演、エディターや写真家によるポートフォリオレビュー、写真教室など特に多くのイベントが行われます。展示はギャラリーや美術館だけでなく、教会やアトリエなど様々な場所で行われている他、自主的に展示販売を行っている人もいます。
今年で48年目を迎える写真祭。1978年の第9回目には日本の写真家・植田正治が招待され、その後ヨーロッパで彼の名が有名になったなど、アルルで評価され世界的に名が知られるようになることもあるのだとか。写真を志す人ならぜひ一度足を運んでみたい場所です。
「自分とは何者か?」というテーマで写真を撮り続けた、近代日本を代表する写真家の一人、深瀬昌久の展示が行われていました。アルルでは現代の作家だけではなく、写真史の中で重要なかつての写真家の作品にも出会うことができます。
セルフポートレート作品が多い他、多重露光を用い鮮やかな色彩の異なるイメージを重ねた実験的作品や、度々撮影した鳥のモチーフには力強い個性があり、「救いようのないエゴイスト」という作品展のタイトルを反映しているようでした。
元SNCFの倉庫を改装し、巨大な展示スペースとして再利用されているLes Atrilersでは、著名人のポートレートで名高いアニー・リーボヴィッツの1970年から1983年の作品をまとめた大回顧展が開催されていました。ローリングストーンズのツアー写真、暗殺される直前のジョン・レノンとオノ・ヨーコなど歴史に残る名作を一度に見ることのできる貴重な展示です。
今回のフェスティバルのテーマのひとつがLATINA !ラテンアメリカ、なかでもコロンビアの作家の作品が多く取り扱われていました。コロンビアの首都ボゴタ出身で現在はベルリンを拠点に活動するアーティストAndrea Acostaは都市を彷徨い見つけた偶発的な物や出来事を写真やスケッチ、オブジェを用い独特の手法で地図や図鑑のように分類し、収集します。
彼女の作品はエネルギッシュなラテンアメリカのイメージだけでなく、繊細で詩的な一面を私たちに提示しています。
南アフリカで活動する、今最も有名な写真家の一人、ロジャー・バレンのエクスポジションが小さなギャラリーで開かれていました。彼が監督した「DIE ANTWOORD」の"I Fink U Freeky"のミュージックビデオをご存知の方も多いのではないでしょうか。シンプルで退廃的でダークな独特のスタイルは、一度目にすると決して忘れることのできない強い印象を残します。
このような小さなギャラリーでも、素晴らしい写真家たちの展示を見ることができるのがアルル国際写真祭の素晴らしいところ。小道の隅々まで歩いてみると、大きな発見があるかも知れません。
2017年は7月3日から9月24日までの開催です。毎年同じ時期に開催されるので、ぜひ次の南仏旅行の予定に組み込んでみてはいかがでしょうか。特に会期1週目は多くの写真家たちが招待され来場者も多く、お祭り気分を存分に楽しむことができるでしょう。また同時期に開催されるPhoto Folio Reviewは目玉イベントのひとつ。事前予約必須ですが、プロ・アマ・学生問わず写真の持ち込みが可能で、エディター、ギャラリスト、コレクターなど写真のプロから直接批評してもらうことができます。各20分のセッション×5回で195ユーロ〜と高額ですが、その場で出版やエクスポジションの話がまとまることもあり、アメリカンドリームならぬアルルドリームを掴む大チャンスです。
※この時期はバカンス客も多く、宿泊施設は大変混み合います。ホテル、airbnbの予約はお早めに!
https://www.rencontres-arles.com/fr
チケット
FORFAIT TOUTES EXPOSITIONS(期間中有効)
当日一般40ユーロ、学生32ユーロ、ウェブ購入一般36ユーロ、学生28ユーロ
※各展示1回のみ入場可能
FORFAIT JOURNÉE(1日券)
当日一般33ユーロ、学生28ユーロ、ウェブ購入一般29ユーロ、学生24ユーロ
※各展示1回のみ入場可能
無料 18歳未満、など
チケットはウェブで予約購入し、現地のチケット売り場にて引き換えすることができます。その際に購入時に入力した名前、もしくは購入番号が必要となりますので控えておくようお気をつけください。