パリのベルシー駅(Gare de Paris Bercy)から電車アンテルシテ(Intercités)でおよそ3時間。オーヴェルニュ地方の街ヴィシーは、「水の都の女王(Reine des villes d'eaux)」と呼ばれています。カエサルが遠征でヴィシーに来ていた際、そこに湧き出る温泉水の滋養効果を発見したという伝説も残っているほど、この街は古くから温泉の街として知られてきました。
ホテル:Vichy Célestins Spa Hotel
住所:111 Boulevard des États Unis, 03200 Vichy
価格帯:およそ150~200 €/泊 (詳しくは公式HPにて)
ヴィシーを流れるアリエ川に面する五つ星のホテル、ヴィシー・セレスタン・スパ・ホテル。旧市街や公園などへのアクセスも良く、観光にも便利な立地です。
VICHY CELESTINS THERMAL SPA
ヴィシーへ旅をしたら体験してほしいのはやっぱり「温泉」。ヴィシーはフランスで唯一、火山性の温泉(オーヴェルニュ火山)が湧き出る地で、ここの温泉水には豊富なカルシウム、銅、鉄分、ナトリウム、マンガン等が含まれています。これらの成分は表皮や真皮の活性・再生を促進するのだそう。古代ローマの時代から、人々はヴィシーの温泉水を得るために行列を作ったといいます。
こちらのホテルをおすすめした理由も、ヨーロッパ最大のスパがあるから。サウナやマッサージ、美容トリートメントなどの様々なコースを備えていて、日ごろの疲れを癒してすっきりリフレッシュすることができますよ。
VICHY BEAUTY LABORATORY
ミネラルをたっぷり含んだこの地の温泉水を使って作られているスキンケアブランド、ヴィシー(VICHY)がホテルに美容サロンを構えているのもうれしいポイント。ブランドの製品を使ったフェイスケア・ボディケアを受けることができます。
先ほどもお話しましたが、ヴィシーの温泉水には、カルシウム、マグネシウムなどをはじめとする豊富なミネラルが含まれており、温泉治療などの外用から飲料用まで広く使用されています。複数ある泉源の中でも日常的な飲料にできるのはセレスタン(Célestins)という種類で、ボトル入りの温泉水が売られています。これは胃の不調にも効果があるのだそうで、ホテルに宿泊すると無料で飲むことができます。
ヴィシーで最もユニークな食べ物は、セレスタンの温泉水で作られた食べ物ではないでしょうか。ホテルのレストラン「Le N3」では、シェフと栄養士のコラボレーションの元、温泉水を使い、なおかつ健康に良いメニューを提案しています。中でも最も印象深かったのは温泉水で作られたムース。 塩気が多く炭酸も強い、マグネシウム含有量の高い温泉水を直接飲むのとは一味違ったまろやさがありました。
LE HALL DES SOURCES
市内中心部には、複数の泉源からくる温泉水が集まった場所があります。ホテルに泊まる機会がなくても、ここでは自由に試飲することができます。
こちらの女性が手にしているのは温泉水を汲み入れる小さな水筒が入ったバッグ。ヴィシー住民ならではの持ち物です。
街を散策していたら、可愛らしい馬車にも出会いました。
RIVIERE ALLIER
こちらは先ほどご紹介したホテルのテラスから見えたアリエ川のある風景。ゆったりとした川の流れは、なんだか気持ちもリラックスさせてくれるようです。川沿いをのんびり散歩してみるのもいいかもしれません。
HÔTEL DE VILLE
こちらはヴィシー市庁舎。フランスの街らしく美しい佇まいです。今回私たちが訪れたのは、ヴィシー市長にお会いするため。非常に親切な方で、ヴィシーの歴史について、それから、今回の取材の目的のひとつである「ナポレオン三世祭り(Fêtes Napoléon III、詳しくは後述)」についてなど、丁寧にご説明いただきました。
ヴィシーの歴史を説明するフレデリック・アギレラ(Frédéric AGUILERA)市長。 なお、現在ヴィシーは世界遺産都市へ申請を行っており、それに向けて様々な取り組みを行っているのだそうです。
FETES NAPOLEON III : A LA TABLE D'HOTE DE L'EMPEREUR
さて、市長のお話によれば、ヴィシーが温泉の街として本格的に有名になったのはナポレオン三世の時代なのだそう。ナポレオン三世がこの地を1861年に訪れた際に非常に気に入って、それ以降毎年訪れるようになり、これに伴って開発が進んだことによってヴィシーはもっとも有名なスパリゾートの街のひとつになったのです。
ナポレオン三世祭りは2008年に彼の生誕200周年を記念して開始され、それからも毎年春にナポレオン三世の功績を称えるために続けて開催されているとのこと。2018年は4月28・29日に行われました。期間中は仮装パレードや乗馬ショーなど、街中で様々なイベントが催されますが、今回私たちは「皇帝の晩餐会(A la table d’hôte de l’Empereur)」という、ヴィシーのオペラ座にて行われたディナーショーへ参加してきました。
オペラ座内部の装飾は息を呑むほどの美しさ。そして、色とりどりの豪華な衣装に身を包んだダンサーたちが、19世紀のフランスへと私たちを誘います。宮廷舞踊とディナーが一緒に楽しめる、なかなかない素晴らしい時間を過ごすことができました。
ディナーショーに仮装して参加した人の多くが伝統衣装の愛好家たちで、驚いたのが、自分自身で衣装を作っている人が非常に多いことです。例えば写真の彼女はプロのデザイナーではないのにも関わらず、こちらの素晴らしい衣装をたった一人で作ったそうで、制作には6か月間かかったのだとか。優雅な装飾や衣装だけでなく、人々のアートへの情熱にすっかり感動させられた夜でした。
温泉と歴史の街ヴィシー。住む人たちも魅力的で、心癒される場所です。ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
ナポレオン3世祭りは一年に一度、春に開催されます。イベントによっては事前予約が必要な場合もありますので、訪問を検討なさる際には市のサイトやOffice de TourismeのFBページなどで事前に情報をご確認ください。
Vichy市街地の地図はこちら
文、写真:Fang WANG