セーヌ川沿いにあるオルセー美術館は、言わずと知れたフランス印象派芸術の楽園とも言える場所。ドガ、マネ、モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャンなど、印象派美術の名だたる名作がズラッと並ぶオルセー美術館は、世界中にもその名は知れ渡り、毎年数多くの観光客や地元フランス人達が足を運ぶ世界的な美術館です。
オルセー美術館は、元々駅舎として使われ、その後1970年に19世紀芸術を展示する美術館へと変身を遂げました。ガラス張りの天井からは暖かな太陽光が差し込み、産業革命によってもたらされたモダンな館内を優しく照らしています。見学する際は、作品だけでなく建築にも目を向けてみてくださいね。それでは早速、オルセー美術館見学で知っておくべきポイントを見ていきましょう。
オルセー美術館は世界的に有名で、年間を通して多くの観光客が訪れます。混み合うことも予想されるし、大きな美術館なので所要時間も気になるもの。そこで、スムーズに時間を無駄にすること無く見学するための、5つのポイントを見ていきましょう。
Q. オルセー美術館を見学するのにかかる時間は?
A. 一般的に、有名作品の数々をゆっくり見て回ると4時間ほどかかります。
Q. 入り口は並びますか?
A. 曜日と時間帯によります。現在の待ち時間はこちらから確認できます。長時間待つのを避けるためには、事前にチケットを購入しておくのがおすすめです。
Q. 見学におすすめの時間&曜日は?
A. 水曜日か金曜日の朝10:30前に行くと、他のお客さんに邪魔されること無く静かに見学ができます。
Q. どこでチケットを変えますか?
A. 美術館のチケット売り場でも買えますが、事前購入なら下記のGetyourguideから購入できます↓
Q. 各作品の展示場所は?
A. こちらから確認できます。展示場所は定期的に変更になる場合もありますが、毎日情報が更新されています。
各フロアの特徴を知っておけば、貴重な時間を節約できます。オルセー美術館の常設コレクションは 5 つの階に分かれており、芸術運動ごとに展示されています。ギャラリーは時計のある中央通路を中心に左右に分かれています。
地上階は、1850年から1880年までに制作された彫刻が中央のホールに並んでいます。その両脇にある展示室に、クールベ、ドガ、ミレーなど、ナビ派、象徴派、写実主義、アカデミズム作品が展示されています。地上階は特に大型絵画も多く、ここにもあっちにも迫力のある作品が飾られていて、伝統的なアートの世界観にどっぷり浸ることができます。
トマ・クチュール Thomas Couture, 退廃期のローマ人たち Les Romains de la décadence (1847)
1850年から1900年までのフランスのアカデミズム作品の代表作。人間の残酷さとモラルに着目したメッセージを表現しています。クチュールは、7月王政について、フランス社会の道徳的退廃を批判しています。
ジャン=フランソワ・ミレー Jean-François Millet, 落穂拾い Des glaneuses (1857)
オルセー美術館の中でも最も有名な絵画の一つ。フランスの農村で、落ちた稲穂を黄金色に輝く畑で拾う3人の女性が描かれています。ミレーのこの作品は、当時上流社会の者しか描かれなかった芸術の世界に、当時社会的最下層であった農民の貧困を描いたことがセンセーショナルでした。
ジャン=バティスト・カルポー Jean-Baptiste Carpeaux, Les quatre parties du monde soutenant la sphère céleste (1866)
このダイナミックで官能的な彫刻は、地球に調和する4つの大陸を表しています。それぞれの女性像は、典型的な特徴と人種の外観を持つ異なる大陸(アジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ)を表しています。
3階、4階は、イギリスとオーストリアのアール・デコラティブのコレクションが展示されたフロア。アール・ヌーヴォー様式で装飾が施された家具や陶器などは、うっとりするほどの美しさです。現在のインテリアデザインにも大きな影響を与えた、ヨーロッパのモダンデザインは必見です。19世紀後半の美的運動の波とともに、デザインと実用性を組み合わせた時代です。装飾的で派手だった一世代前の家具に比べると、装飾が少なくなり、建築的要素を組み合わされるようになりました。機能的な構造を持ったことが、その当時の新しさでした。
クリストファー・ドレッサー Christopher Dresser, Soupière (1888)
このエレガントでシンプルなスープ鍋は、美的運動の、特にイギリスと日本の様式を組み合わせた、現代の英和風の重要な作品。ドレッサーは、斬新な形で、美的調和のある機能的な作品を作り上げました。
ルイス・コンフォート・ティファニー Louis Comfort Tiffany, Vase (1915), Vase (1915), Vase (1900)
これらの作品は、あの世界的有名ブランドのティファニーの最初のディレクターが作ったもの。彼は、主にセラミック、ジュエリー、ステンドグラス作品を作り上げました。写真の3つの花瓶は、彼のシグネチャーとも言える作品です。
ヨーゼフ・ホフマン Josef Hoffmann, Corbeille (1904)
ホフマンの装飾芸術は幾何学的なセント二次元性がテーマで、シンプルな形が特徴です。
5階は、印象派からポスト印象は作品を展示しているフロア。マネ、モネ、セザンヌ、ゴーギャン、ピサロ、ルノワール、スーラ、ロートレックなど、名だたるアートの巨匠達の作品が並んでいます。絶対に見逃せない傑作がギュッと集められたのがこのフロアなので、もしパリ旅行がタイトスケジュールなら、まず5階から見学するのがおすすめです。また、写真、建築、映画作品も同じフロアに展示されています。また、新しく所蔵された作品もこの階にあります。
エドゥアール・マネ Edouard Manet, 草上の昼食 Le déjeuner sur l'herbe (1863)
発表当初、大スキャンダルを巻き起こしたマネの「草上の昼食」。伝統的な、人々を三角形に配置した絵画でしたが、まず女性だけ裸であることへのモラル的批判、そして奥の水浴びをしている女性のサイズがリアルじゃない、そして最後に、座っている女性が鑑賞者の方をまっすぐ見ている点が当時センセーショナルで、多くの批判の声を浴びました。しかし、それが後の印象派絵画へとつながる足がかりとなり、現在では名作として多くの人々が世界中から見学しに訪れています。
オーギュスト・ルノワール Auguste Renoir, ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会 Bal du moulin de la Galette (1876)
優しく甘いタッチが特徴的なルノワールの代表作、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会。モンマルトルで日曜の午後を過ごす、ダンスや食事を楽しむパリジャンたちを描いた作品です。印象派画家達の愛した、群衆、光、動き、一般市民の生活という要素がギュッと詰まった作品です。ルノワール特有の、白いドレスの女性が描かれているのも特徴的です。ルノワールにとって、白は女性を美しく見せる色でした。
フィンセント・ファン・ゴッホ Vincent Van Gogh, ファン・ゴッホの寝室 La chambre de Van Gogh à Arles (1889)
ファン・ゴッホの寝室は、後に様々なアーティストや広告などにもオマージュされた作品。「黄色い家」としてしられた、ゴッホの自宅の寝室の風景です。黄色と青、緑と赤の、強い色のコントラスト、ラフでどっしりとした筆のタッチは見るものを圧倒させます。なにより、誇張された遠近法がありながらも、どこかのっぺりとした二次元性、そして一つ一つの物を囲む輪郭線は、ジャポニズムの影響を感じさせます。
同じく5階にあって見逃してはならないのが、オルセー美術館の大時計。絶好の写真スポットで、くっきりとした陰影がインスタ映えすること間違いなしです。時計の真ん中からは、チュイルリー公園やセーヌ川を見渡すことができます。写真を撮りたい場合は、人の少ないうちに行くのがおすすめです。
美術館内でコーヒー片手に休憩したい時や、ブランチを食べたいという場合は、もう一つの大時計の前にあるカフェCafé Campanaがおすすめです。15-20ユーロで、軽めな食事を、アール・ヌーヴォー様式の贅沢な空間で楽しめます。
営業時間 : 10:30 - 17:00
常設展の他に、19世紀の様々なアートに焦点を当てた期間限定の特別展も開催されています。企画展は大体4-6ヶ月間で入れ替わり、その時々で違ったテーマの展示があるので、何度足を運んでも楽しめます。現在は、印象派グループに加わらずに独自のアートを貫いたジェームズ・ティソやレオポルド ショヴォーの特別展が開催されています。
レオポルド ショヴォーは、独創的で斬新な作品が特徴的。ちょっと変で、なんだか可愛い、そんなモンスター達を彼のイマジネーションから作り上げています。子供の頃に描いたような、エネルギー溢れる自由な作風は見るものの心を掴んでやみません。お子さんと一緒に見学しても楽しめる特別展です。
社交界とハイファッションを描いた画家、ジェームズ・ティソ。ドガやホイッスラーと交流があり、ドガとも題材が近いのが見て取れます。ファッション業界で働いていた両親の影響から、ファッションのディティールや生地のテクスチャーなど、細かなところまでファッションにこだわって作品を完成させています。だからこそ、ティソの作品が並んだ展示室は、うっとりするほど美しく、感性を磨かれる空間です。
オルセー美術館の素晴らしい19世紀芸術を楽しんだ後は、美術館の目の前を流れるセーヌ川でピクニックやお散歩を楽しんでみては?セーヌ川の向こう側には、モネの睡蓮の連作が展示されたオランジュリー美術館があります。オランジュリー美術館もオルセー美術館と合わせて見学する場合は、2つの美術館入場券がセットになったチケットでお得に楽しめます。
著者 - Yuka
撮影 - Alae Lee