カテゴリー : 美術館・博物館
住所 : 6 place d'Iéna, 75116 Paris (メトロ9番線 Iena駅)
開館時間 : 10h00 - 18h00 / 火曜休館 (5月1日, 12月25日, 1月1日休館)
チケット : 常設展のみ 7,50€ (26歳未満 5,50€) / 常設+特別展 9,50€ (26歳未満 7€)
18歳未満無料、毎月第一日曜日無料
※身分証明書 (パスポート、国際学生証など) の用意をお忘れなく!
ウェブサイト : http://www.guimet.fr/en/home
実業家エミール・ギメ (1836-1918) によって創設されたギメ東洋美術館 <Musée national des arts asiatiques Guimet>。
東洋学、特に宗教研究に関心を寄せたギメ自らがアジア各地を訪れ収集した遺物や美術品を展示したのが始まり。1879年にリヨンに創設されましたが、1885年にパリに移り、1945年にはルーヴル美術館の東洋部のコレクション全体がギメ美術館に移されました。それ以来ルーヴル美術館の東洋部門の役割を果たしており、所蔵コレクション数は4万点以上、ヨーロッパ最大の東洋芸術美術館です。
メトロIena駅から徒歩30秒もかからない場所に位置する美術館のエントランスを入ってチケット売り場を通り、まず正面に現れるのはインドネシア、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、タイなどの東南アジア芸術のゾーンです。フランス式3階建て+地下の構造で、階毎にインド・東南アジア・中央アジア・アフガニスタン・ヒマラヤ・中国・韓国・日本など、国またはエリア別に分かりやすく展示されています。
毎回新しいコレクションに少しずつ変わるギメ美術館、現在は0階のエントランスホールに巨大な仏像と一緒に、石膏でできた大きな足台の上に仏教儀式でよく使われるお香が大量に刺さっている作品が展示されていました。
カンボジアのアンコール美術品が特に充実していて、保存状態もとてもいいクメール彫刻を観ることができます。
同じ仏教の美術でも、国ごとに表情や形、像のイメージが異なっています。
当時、インド、タイ、カンボジアはすべて同じ宗教で「仏教」を信じていましたが、仏教の創始国であるインドと周辺の他の国の仏教美術は明確な違いがありました。いくつかの国を経る間に新しい意味や解釈が加わっていったり、地域的な特性が反映されていき、やがて仏像の姿も少しずつ変わるだけでなく、仏像製作のための材料も泥、石、青銅、木などで多様性を帯びていきました。
仏像の手は、その形に応じて意味が変わります。これを「印相 (いんぞう)」といい、その形によって仏のメッセージを表しているのです。例えばしばしば仏像で目にする、両手の親指と人差し指を突き合わせて軽く円を描く動作は、釈迦が悟りを開いたときのポーズで心の安定を表しています。
少ないですが、時折先ほどのエントランスホールにあった石膏の作品のような形でコンテンポラリーアートも含まれていたり、不思議な展示の仕方でした。
1階はネパール、チベット、アフガニスタン、パキスタン、ヒマラヤ、古代中国のコレクション展示室があります。さらに2階へ上がると日本、韓国、中国と続いています。
1階にあるギメの書斎には、図書館のように大量の本が陳列されています。本を手に取ることはできませんが、豪華で美しい展示室でした。
エミール・ギメが収集した書籍、仏像や東洋美術品。今から100年以上前に、彼はフランスからほど遠い、未だ未知であったであろうアジアの地を訪ね、一生をかけて数多くの遺品を集めたのです。
2階では、中国・韓国・日本のコレクション展示を見ることができます。こちらは中国のもの。かわいらしい!
韓国のお面たちはとっても愛らしい表情をしていました。
日本の工芸品。色使いや丁寧な仕事、重厚感を感じます。保存状態も抜群!
千葉の古墳から見つかった埴輪。この表情・・・味がありますね!
この階の中国・韓国・日本の展示は、0・1階で見てきた大規模で派手な他の国の美術品とは異なり、少し素朴で繊細だと感じました。また生活用品である衣服や収納、陶器なども多く、日本の美術品では浮世絵や能面など、より身近に感じられるものが多い印象でした。また、2階はより日常に近い美術品・工芸品が多いので、仏教などの知識がなくても気軽に楽しめますよ。
最後にご紹介するのは、只今ギメ美術館2階で開催中の特別展、<Paysages japonais de Hokusai à Hasui>。
"Paysages japonais"とは"日本の風景"という意味で、今回の特別展示では日本絵画である「浮世絵」を代表する作家たちの作品を観ることができました。「浮世絵」とは江戸時代に日本で発達した木版画のことで、「浮世」という言葉には「現代風」「当世」という意味もあり、主に当時の庶民の生活や風俗をテーマに描く風俗画のことです。
老若男女問わず、様々な方が観にきていました。
こちらは、ゴッホや作曲家ドビュッシーも影響を受けた浮世絵画家、葛飾北斎の代表作 "冨嶽三十六景" から <神奈川沖浪裏>。
大自然の下で人間は弱いながら、向こうの富士山は静かに遠くから見守っているかのような、静と動が交差する画面は圧巻。日本の伝統的な絵画技法に加え、大胆な構成、大きな波と小さな富士山など、西洋の遠近法をうまく使っている点、またこの"一瞬の景"を捉えた浮世絵は、ヨーロッパのアーティストたちの心を掴んだのです。
こちらはゴッホが模写したことでもよく知られている、安藤広重の "名所江戸百景" から、<大はしあたけの夕立>。
大橋の上、突然の夕立が降る中の市民たちの様子を生き生きと描き出しています。広重は風景版画で活躍した作家ですが、彼の作品を観ると、繊細な筆致と色の調和が美しく詩的に感じられます。
ギメ美術館では、2017年6月21日から10月2日までこの<Paysages Japonais>を開催しています。
その他、時期によって様々な企画展も開催し、映画上映、コンサート、スペクタクル、ワークショップ、講演会なども随時開催しています。なんと日本庭園や茶室も併設されていますよ!また地下のレストランではおいしいアジア料理を食べることもできます。
0階のチケット売り場向かいの案内所では、日本語を含むオーディオガイドも無料で貸し出ししています。パンフレットも日本語の用意がありますので、是非利用してみてくださいね。