サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュとその周辺の街

フランスの山と言えばアルプスが思い浮かぶかと思いますが、実はピレネーも見逃せない人気スポット！ピレネー地方は、フランス人の間では人気のバカンスリゾート地です。冬はスキー、夏はハイキングと、どの季節でも楽しめるのが魅力的。海外からの観光客にはまだあまり知られていないので、フランス人に囲まれて過ごす、通な休暇を過ごしたい方には断然ピレネーがおすすめです！

今回は、そんなピレネーエリアの人気の街であるコマンジュ、サン＝ベルトランのユネスコ世界遺産、そしてその周辺の街の魅力に迫ります。忘れられないユニークな体験ができるピレネーについて、早速見ていきましょう！

サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュに行くべき理由

サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュは、「ピレネーのモンサンミッシェル」と言われるほど長い歴史を誇る小さな村。そんな長い歴史や建築が、この村を訪れるべき一つ目の理由。特にローマ帝国時代、街は「Lugdunum Convenarum」と呼ばれ、今のフランスとスペインの領土間をつなぐ重要なハブとしての役割がありました。現在でも、古代からの歴史の跡が色濃く残され、村やその周辺では考古学者たちによる発掘調査が行われています。

ローマ帝国崩壊後に旧市街は破壊されましたが、その後に再建され、重要な宗教の中心地となりました。現在の村は、中世に建てられたもので、それこそがサン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュの村が特別たる所以。村にある大聖堂は1998年にフランスのサンティアゴ・ド・コンポステラ街道の一部として登録されました。そんな歴史的建築に囲まれた村に一歩足を踏み入れると、まるでタイムスリップしたみたい！

歴史や建築以外にも、見逃せない魅力があるんです。それが、美しい自然！サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュはピレネー山脈のふもとにあるので、雄大な自然を感じられるのが村を訪れるべき理由の二つ目です。

そして、美味しいフランス料理レストラン、お土産屋さん、革小物や本などの小さなお店などが集まった賑やかな村の中心部も見逃せない魅力の一つです。

サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュで見るべきおすすめスポット

さて、サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュに行くと決めたら、必見スポットをチェックしましょう！

まずは、もちろんユネスコ世界遺産に登録されている大聖堂(カテドラル)！古い家や険しい城壁に囲まれた大聖堂は、高さ500mで、高台の頂上にあります。現在の大聖堂には、12世紀のロマネスク様式、14世紀のゴシック様式、16世紀のルネッサンス様式の3つの異なる時期に建てられた3つの部分で構成されています。大聖堂の一部のみが無料で見学可能。博物館と庭園を含む建物全体に入場できるチケットは7ユーロです。

カテドラルの中で最も感動的なのは回廊です。回廊の古い部分は12世紀に建てられました。2列の美しい装飾の柱の上にはロマネスク調の優美なアーチがあります。上の写真では、4人の伝道師をモチーフにした柱が描かれています。南側のギャラリーは、周辺の田園地帯に面していて、そこからは最高の眺めが楽しめます。

ゴシック部分は、リメディオナルゴシックと呼ばれる様式で建てられています。長さ55m、幅16m、高さ28mの一つの身廊があります。オルガンは、1550年に作られたもの。67の美しい木彫りの席もあります。聖ベルトランは、この地域で重要な役割を果たし、のちに聖人に昇格した地元の司教。その聖ベルトランの墓も、多くの中世のが飾られていて見どころの一つです。

大聖堂の外側にあるOlivetainsは、インフォメーションセンター件博物館で、地域の工芸品を含む様々な展示があります。

サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュは、フランスで最も美しい村の一つ。村自体はそれほど大きくありませんが、保存状態のいい中世の建物は感動的。村にある3つの中世の入り口や要塞の壁のかなりの部分が現在でも残っていて見学することができます。15世紀にさかのぼる印象的な伝統的木組みの家は特徴的。中でも必見なのが、上の写真のメゾン・ブリドー。「ヴィル・バッス(ville basse)」と呼ばれる村の下部は無料でアクセスでき、旧市街の遺跡を見学できます。

サン＝ベルトランから車で5分(徒歩で30分)行くと、Valcabrèreの小さな村があります。ここには12世紀の教会があります。絵本の世界に迷い込んだかのような美しい田園風景に囲まれたサン・ジュスト・ド・ヴァルカブレアのバジリカはロマネスク建築の至宝とも言われています。

このバジリカは、多くのローマの遺跡から取られた石を再利用して建設されました。実際に壁を見てみると、ローマ建築特有の美しい彫刻が施された石を見つけることができます。大聖堂の入場料は3ユーロで、無料アプリで英語のガイドを聞くことができます。大聖堂の外では考古学者がローマ時代の街とネクロポリスの遺跡の調査を行っています。

おすすめの時期は？

どの季節もそれぞれに違った魅力があります。冬は雪化粧したピレネー山脈、春は花々が美しい田園風景、木々が青々と茂る夏、紅葉が鮮やかな秋。中でも夏は一番観光客が増えて賑わうシーズン。毎年6月から8月の間はCommingesで国際的な音楽フェスティバルが開催されます。クラシック音楽のフェスティバルは世界中のアーティストにも人気で、多くの演奏が大聖堂内でオルガンを使って行われます。

サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュへ行くのに公共交通機関はないので、レンタカーかタクシーが必要になります。おすすめはレンタカー。サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュはトゥールーズから車で1時間20分ほど。電車の最寄り駅はMontrejeau - Gourdan Polignan駅です。村の上部と下部に駐車場がありますが、上部の駐車場は夏は閉まっています。下部の駐車場から村の上部までは小さな電車があります(2ユーロ)。

周辺のおすすめスポット

ピレネー山脈の中央にあるサン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュは、その周辺にも必見スポットがたくさんあります。せっかく行くなら是非周辺にまで足をのばしてみましょう！

Vallée de la Barousse バルース渓谷

よりのんびりとした田舎の雰囲気を楽しみたいなら、バルース渓谷がおすすめ。ウルス川が流れる渓谷の上の方には豊かな森があり、中央は草原になっています。谷には住人が少ないので、自然愛好家や、ピレネー山脈の自然を楽しみたい方にはぴったり。壮大な自然と豊かな歴史的遺産や多くの古いモニュメントの両方を良いとこどりできるのが魅力です。

美しく伝統的な石造りの村の中で、モレオン・バルース(Mauléon-Barousse)、フェレール(Ferrère)、エスバライヒ(Esbareich)、ウルド(Ourde)、そして上の写真のブラムバケ城(Bramevaque)の遺跡は必見です。

また、「Gouffre de la Saoule」と呼ばれるウルス川に連なるいくつもの美しい小さな滝はこのエリアの癒しスポットです。そして、地元のオーガニック食材や肉も見逃せません。このエリアを訪れるならぜひ食も楽しみましょう！

特に、ピレネー地方の「フロマージュ・ド・バルッス」と呼ばれるチーズは有名です。牛や羊の父を使って伝統的な方法で作られ、そのお味は中央ピレネーで一番美味しいと言われているほど。

チーズ工房のほとんどがソスト(Sost)の街にあり、いくつかの羊小屋は見学可能です。

ソストでの楽しみ方は、やっぱりお散歩が一番！ゆっくり小さな村を散策しながら、地元の人々とお話したり、ピレネーの閑静な風景を楽しんだりするのは至福の時。ぜひ、フランスの伝統ある田舎の世界観を楽しんでみてくださいね。

フランスの田舎では、動物が自由に歩き回っているのも特徴的。村を散策中に可愛い動物たちに出会う瞬間も心がほっこりと癒される、このエリアの魅力です。

Luchon リュション

19世紀から、リュションはフランス有数の温泉地として知られています。温泉は、皇帝ナポレオン3世が好んだことにより、人気が急上昇しました。それによってリュションはさらに知名度をあげ、ラッセル・キロー伯爵が始めた「ピレネー主義」とともに世界的に観光地として人気となりました。街の中心部の美しい邸宅のほとんどが、この黄金時代に建てられたものです。

サン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュから車で30分の山の上にリュションはあります。雄大な山の上に位置していることから、ウィンタースポーツの盛んな街でもあります。特にスキーが有名で、スキー場(Station Superbagnères)もあります。

リュションでは、中央ピレネーで有名な「ガトー・ア・ラ・ブロッシュ(Gâteau à la Broche)」というケーキを食べることができます。これはバームクーヘンに似たお菓子で、回転する軸に、ケーキ生地とバターを交代で付けながら少しずつ大きく焼くケーキです。街角で直火で焼かれるのが一般的です。

Comminges コマンジュ地方

コマンジュは、サン＝ベルトランの中でも最も歴史的な地域の一つ。中世には有力な国として機能していました。そのため、現在でも街を歩くとたくさんの歴史的遺跡を見つけることができます。

このエリアの中でも最も有名なのが、モントレジョー(Montrejeau)、サン・ゴーダン(Saint-Gaudens)、アスペ(Aspet)、オーリニャック(Aurignac)、そして上の写真のリル・アン・ドドン( l'Isle en Dodon)です。

フランスの田舎町を堪能できるサン＝ベルトラン＝ド＝コマンジュ、いかがでしたか？都会の喧騒から離れて、雄大な自然と共生している小さな村を訪れるのはフランス人に人気のバカンスの過ごし方。ぜひ、現地のフランス人のように通な休暇を過ごしてみてくださいね！

著者 : Yuka Ishihara

撮影: Vincent Sacau