基本情報
Saint-Rémy-de-Provenceへのアクセス : 一番近い鉄道の駅があるのはアヴィニヨン(20kmほど)。アヴィニヨンからは、タクシーもしくは57番線バスで30分程度です。57番線バスは、Gare d'Avignon-Centre駅近くの停車場から、アヴィニヨン市内にある複数の停車を通ってSaint-Rémy-de-Provenceへ向かいます。バスの時刻はこちらから。
移牧祭りの開催時期 : 毎年5月末(20日前後)。詳細な開催時期は、市のイベントカレンダーから確認できます。
サン・レミ・ド・プロヴァンス(Saint-Rémy-de-Provence)は、プロヴァンス地方のこじんまりとした閑静な街。ノストラダムスの生家や古代ローマの遺跡があること、ゴッホが滞在していたことなどで有名で、観光地としても知られています。他のプロヴァンスの街と同じように、泉や小さな路地など、南仏らしい風景が広がる可愛らしい街です。
この静かな街が一年に一度大きく活気づいて賑わうイベントが、移牧祭り(Fête de la Transhumance)です。
羊の移牧はフランスの伝統的な牧畜文化に根付く大切な行事です。冬は寒さや雪を避けるために低地で、夏は暑さや乾燥を避けるために高地で、羊にとって快適な気候と十分な食料を求めて移動を行います。
地域のすべての家畜、およそ三千頭にも及ぶ羊、ヤギ、ロバなどを一堂に集めて移動させるサン・レミの移牧は、フランスでも最も有名な移牧のうちのひとつです。
毎年気候が暖かくなる5月末、羊の群れはプロヴァンスを離れてアルプスの山岳地へと向かいます。かつては徒歩で行われていた移牧ですが、現在は大型のトラックにて行われることがほとんどだそうです。
というわけで、今では地域の伝統文化の保護の意味合いが強い移牧祭り。観光客も集まる大きなイベントになっています。移牧の初日はしばしばごちそうと一緒に祝福され、街ではブロカント(古道具市)やチーズの市場などのイベントも一緒に開催されます。
羊やヤギが道路を占拠して、一斉にやって来る光景はまさに圧巻。羊飼いたちはみなプロヴァンス地方の伝統的な衣装を身に纏っています。
羊たちはそれぞれ違う羊飼いの所有物なので、見分けられるように複数のシンボルによって目印がつけられています。これらの羊は主に毛糸やチーズのため、または食用として飼育されています。
トラックでの移牧が大半となっている今でも、伝統的な移牧を行う羊飼いたちが残っているそう。彼らはサン・レミの街を抜け、一週間以上もかけて徒歩でアルプスへと向かっていきます。
何世紀も前から続いてきたサン・レミの移牧。時代が変わって、牧畜の習慣が変わっても、かつての羊飼いたちの誇りと伝統を垣間見られるこの大切なお祭りが末永く続きますように。
文、写真 : Vincent Sacau
訳 : Rei Nishiyama