フランスのベーカリーはとてもレベルが高く、世界的に有名です。しかし店内に入ると、種類がたくさんあり、どれがなんだか分からないことも多いはず。実際に、フランスのベーカリーでは試して欲しい美味しいパンがたくさんあります。今回はパリジャンがおすすめする、「ヴィエノワズリー」に焦点を当ててご紹介します。
ヴィエノワズリー(仏: Viennoiserie)は イースト発酵させたパン生地または様々なペイストリー生地を焼いた菓子パンの総称です。中はふわふわで外はカリッと焼きあげられたものが多く、パンとケーキの間のような存在だと言えるでしょう。パンよりも甘く高カロリーですが、ケーキほどではありません。ヴィエノワズリーという名前はオーストリアのヴィエナのフランス語名に由来しています。実際にこれらのお菓子的なパンはオーストリア発祥で、1839年にパリにオープンしたヴィエナ式のベーカリーが始まりです。朝食やティータイムにおすすめのヴィエノワズリーを早速紹介していきたいと思います。
最もクラシックでシンプルな答えはまずクロワッサンです。1683年からヴィエナの街はオスマン帝国に支配、包囲されていました。オーストリア軍がオットマンに打ち勝つと、あるベーカリーがオスマン帝国の旗の紋章である三日月形のパンを焼き始めました。これを市民がシンボルとして食べ始めたのが始まりと言われています。その後はオーストリア人のマリー・アントワネットがフランスでクロワッサンを広め、19世紀後半にはフランスのベーカリーのシンボルとなりました。
美味しいクロワッサンは、外側がカリカリしていて、中は細かな層が重なることで柔らかい食感で焼きあがります。croissant au beurreがバターを少し多めに使っていて香りも良く、とてもおすすめです。アーモンドを使用したcroissant aux amandesもおすすめ。
次に有名なのがパン・オ・ショコラ。棒状のチョコを筒状に包んだ甘いパンです。フランスの南西部やカナダのフランス語圏ケベック州ではショコラタン(Chocolatine)が広く使われる一方で、北、東フランスとベルギーではパン・オ・ショコラが一般的な呼称です。場所によって名前が違うと人々はいつも、こっちの名前が正しいなど議論します。
この源氏パイのようなハートの形のパンはご存知でしょうか。大きくて平らなこのヴィエノワズリーはサクサクしていて、カラメルになった砂糖との相性も抜群です。
ブリオッシュ(Brioches)は他のヴィエノワズリーよりももう少しパンのようなもの。トッピングされた大きな砂糖が美味しく、形は様々あります。 ブリオッシュに関する面白い逸話がフランスにはあります。18世紀のフランス革命が始まったばかりの頃、貧乏でお腹を空かせたパリジャン達はヴェルサイユへ行き、王に向かって「パンをよこせ!」と叫びました。マリー・アントワネットは、「パンがないのであればどうしてブリオッシュを食べないのかしら」と言ったといいます。
フィナンシェは日本でもよく見かけますが、フランスのベーカリーやカフェでは、レジの近くにクッキーなどと一緒に置かれることも多いです。軽くてしっとりとしたアーモンドのケーキのフィナンシェは、フルーツやナッツが入っていることもこちらではしばしば。様々な形や大きさがあります。最初のフィナンシェは中世に作られ、18世紀に人気になり普及しました。
ショーソン・オ・ポムはヴィエノワズリーの中でも最もヘルシーだと言えるかもしれません。焼きリンゴが中にはいっており、温めて食べるのがおすすめです。
パン・オ・レザンはフランス語でぶどうパンの意味です。表面にレーズンが乗った渦巻き状の形をしており、カスタードクリームが中に入っています。デニッシュシナモンロールと似た形をしています。
今回はヴィエノワズリーの中でも最も有名でどのベーカリーでも見つかりやすいものピックアップしてご紹介しました。他にもたくさんのヴィエノワズリーがありますので、是非自分のお気に入りを見つけてみてくださいね。
原文・撮影: Vincent Sacau
著者:Leona Fujii